_ ネバーランド


「ピーター・パン」の物語は悲しみを乗り越えるために生まれた──
たくさんの透き通った涙を夢と希望に変えて。


 自分の影法師を探しに、ダーリング家の子供部屋に舞い降りてきたピーター・パン。ネバーランド──決してどこにも存在しない国──に住むこの永遠の少年と、彼が活躍する胸躍る冒険の物語は、誕生から100年の時を経たいまも、世界中の人々に愛され続けている。
 だが、あなたは知っているだろうか? ピーター・パンには、モデルとなった少年がいたことを。そして、その物語が編み出されていった背景に、もうひとつの愛のドラマが存在したことを──。
 1904年12月27日にロンドンで初めて「ピーター・パン」が舞台で上演されてから100年目にあたる今年、その事実をもとに宝石のように美しい映画が作られた。 子供のように夢見る心を持ち続ける劇作家バリと、彼によって夢を信じる心を取り戻していく"ピーター"という名の少年との出会い。 透き通るように純粋なふたつの魂のふれあいを描いた、美しい愛と感動のドラマがここに生まれた。

 舞台は、1903年のロンドン。緑のまぶしいケンジントン公園へ日課の散歩に出かけたバリは、若く美しい未亡人シルヴィアと彼女の息子であるデイヴィズ家の4人兄弟と出会う。
 なかでもバリが関心を寄せたのは、父の死と同時に夢や希望を持つことをあきらめた三男ピーターの存在だった。 たったひとりで心の傷と格闘するピーターに、空想の世界で遊ぶことの楽しさと、物を書くことの喜びを教えるバリ。 彼と母シルヴィアの深い愛情に包まれながら、ピーターは、少しずつ子供らしい純粋さを取り戻していくのだが......。

 早く大人になることで、父の死の悲しみを乗り越えようとするピーターと、そんな彼に幼い日の自分自身を重ねあわせながら、二度とない子供時代の素晴らしさを伝えようとするバリ。
 ふたつの繊細な魂の触れ合いから、「ピーター・パン」の芝居が誕生していく過程をたどる物語は、メイキングものの面白さもはらみながら展開。 そして、病に冒されたシルヴィアをめぐり、ピーターが不安や恐怖と葛藤を繰り広げるエピソードは、思い切り切なさを誘う。
 そんなピーターに、愛する人を心の中のネバーランドに旅立たせることを教えるバリ。 夢を信じることの大切さをテーマにした「ピーター・パン」の物語が、喪失の悲しみの中から生まれたという事実が、見る者の胸に深い感慨を呼び起こす。

 子供のように無垢な心を持ち、ピーターたち兄弟に惜しみない愛情を注ぐバリの役柄に、はまりきった演技を見せるのは、ジョニー・デップ。 『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』でファン層を一気に広げ、アカデミー賞候補になった彼は、今回、独自のイノセントな持ち味を役柄に反映させるいっぽう、スコットランド風のアクセントを習得し、気品と優しさに満ちたバリの肖像を創造。 はやくもオスカー候補最有力の声が高まっている。

 そのデップと共に、ドラマの感動の担い手になるピーターには、『トゥー・ブラザーズ』で注目を集めたフレディ・ハイモアが扮し、繊細でけなげな存在感を光らせる。本作のあと、ティム・バートン監督によるロアルド・ダールの子ども向け小説「チョコレート工場の秘密」の映画化で再びデップと共演するなど、売れっ子の道をまっしぐらに歩んでいる彼は、ポスト・ハーレイ・ジョエル・オスメントの筆頭に位置する天才子役。
 ドラマの終盤、愛する人を失ったピーターが、内に秘めていた悲しみをバリの腕の中で爆発させる場面の演技には、誰もが涙をそそられずにはいられないだろう。




ピーター、そこは夢がかなう場所なんだ。信じれば、必ず行ける。

 1903年のロンドン。華やかに着飾った人々で埋め尽くされたデューク・オブ・ヨーク劇場の片隅で、劇作家のジェームズ・バリ(ジョニー・デップ)は、居心地の悪い気分を味わっていた。
 今日は、彼の新作『リトル・メアリー』の初日。だが、客席の反応は芳しくなく、友人のアーサー・コナン・ドイル卿(イアン・ハート)や、興行主のチャールズ・フローマン(ダスティン・ホフマン)からも、あてこすりを言われる始末だ。
 案の定、翌朝の新聞に載った劇評は最悪。失意のジェームズは、愛犬のポーソスを連れ、近くの公園へ日課の散歩に出かけた。 そこで彼は、デイヴィズ家の4人の兄弟とその母親と運命の出会いを果たす。4人兄弟のうち、長男のジョージ(ニック・ラウド)、次男のジャック(ジョー・プロスペロ)、末っ子のマイケル(ルーク・スピル)は、母のシルヴィア(ケイト・ウィンスレット)に連れられてやって来たその公園で、無邪気に騎士ごっこに興じていた。
 が、人一倍繊細な三男のピーター(フレディ・ハイモア)は、空想の世界へ飛び込むことを拒絶し、ひとりだけ兄弟の遊びの輪から外れていた。 それを見たジェームズは、愛犬をサーカスの熊に見立ててダンスを踊り、少年たちの拍手喝采を浴びる。別れ際、一家との再会を約束したジェームズは、心弾む気分で自宅へ戻った。
さ っそく夕食の席で、妻のメアリー(ラダ・ミッチェル)に公園での出来事を話すジェームズ。それを聞いたメアリーは、夫をガンで亡くしたシルヴィアが、社交界の名士である母のデュ・モーリエ夫人(ジュリー・クリスティ)の援助で暮らしていることを教える。
 野心家のメアリーは、この出会いがデュ・モーリエ夫人に近づくチャンスになると考え、ジェームズに一家を夕食に招待するようにすすめた。 数日後、夕食会は実現したが、それはメアリーの望んでいたものにはならなかった。ジェームズと子供たちの冒険ごっこの話題に、デュ・モーリエ夫人は「大の大人が子供と本気で遊ぶなんて」と顔をしかめるばかり。
 彼女にコケにされたと感じたメアリーも、不機嫌の虫がおさまらなかった。しかし、メアリーの不満の理由は、本当は別のところにあった。


キャスト_ ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット、ジュリー・クリスティ、ダスティン・ホフマン
監 督_ マーク・フォースター
備 考_ 原題:Finding Neverland/2004年/アメリカ・イギリス映画/上映時間:1時間40分/オリジナルサウンドトラック:ユニバーサルクラシックス/配給:東芝エンタテインメント
公 開_ 2005年1月15日(土)日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー
公式サイト_ http://www.neverland-movie.jp/


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