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![]() 上質な芝居をパリで見るようなそんな贅沢な時間をたっぷりと ![]() そんな時代を背景に、恋する男女のすれ違いを、心浮き立つ愉しい音楽にのせてゴージャスに描いた、本格ミュージカルがフランスからやってきた。フランスのアカデミー賞であるセザール賞で主要9部門にノミネート、うち衣装デザイン賞など3部門受賞に輝いた話題作である。 黄金期ミュージカルの魅力を、王道とも言える正攻法の演出で現代に甦らせることに成功した本作の登場は、世界の映画ファンを大いに沸き立たせた。 誰もが楽しめるハッピーでロマンティックなラヴストーリー。全篇を流れる20曲以上もの親しみやすいミュージカル・ナンバー。映画・演劇界を代表する美男美女スターと個性的な実力派たちの豪華なアンサンブル。ため息の出るような20年代ファッションと、美術品とも言える見事なセット。心躍るこのミュージカルは、上質な芝居を観るような楽しみをたっぷりと感じさせてくれる。 最高のスタッフ&キャストにより構築された夢のオペレッタの世界 本作は1925年にパリでロングラン・ヒットを記録したアンドレ・バルド作の傑作オペレッタ「Pas sur la bouche!」を映画化したもの。監督はセザール賞7部門受賞に輝いた『恋するシャンソン』以来これが6年ぶりの待望の新作となった、今年82歳の巨匠アラン・レネ。 キャストにはフランス映画界を代表する演技派たちが贅沢に顔を揃えた。ジルベルトとジョルジュの夫妻を演じるのは最近のレネ作品の常連で、ともにセザール賞を二度受賞しているサビーヌ・アゼマとピエール・アルディティ。ジルベルトの妹アルレットに『ダニエルばあちゃん』『アメリ』の個性派イザベル・ナンティ。『アメリ』でリュミエール賞に輝いたオドレイ・トトゥは、恋するユゲット役でスウィートな魅力を全開させる。 キッチュな芸術家シャルレに扮するのは『ヒューマンリソース』でセザール賞、リュミエール賞など数々の映画賞に輝いたジャリル・レスペール。狂言回しのファラデル役を演じるのは『奇人たちの晩餐会』でセザール賞を受賞したダニエル・プレヴォー。『マトリックス』シリーズなど普段はシリアスな役どころが多いランベール・ウィルソンは、たどたどしいフランス語を操るアメリカ人エリック・トムソン役で意外な二枚目半ぶりを発揮して笑わせる。 また本作でセザール賞助演男優賞を受賞した大ベテラン、ダリー・コールが管理人フォアン夫人役で見せる筋金入りの爆笑演技にも要注目。 ![]() オペレッタという言葉は18世紀、モーツァルトが最初に使ったと言われている。オペラよりも軽く楽しい大衆的な音楽を指していたと思われる。 大衆的な軽いオペラは、パリではオペラ・コミック(後にはオペラ・ブッファ)と呼ばれ、19世紀中頃までに盛んに上演されるようになっていた。そんな中、ジャック・オッフェンバックは1855年、客席数50ばかりの小劇場ブッフ・パリジャンをオープンし、こけらおとしに自身が作曲し、ルドヴィック・アレヴィが台本を書いた一幕物「二人の盲人」を上演し、大成功を収める。これがオペレッタの始まりである。59年には三幕物の初の本格的オペレッタ「天国と地獄」を上演した。以来、オッフェンバックは80年に亡くなるまで、「美しきエレーヌ」「パリの生活」「ホフマン物語」といった作品を次々に発表して、オペレッタ芸術を完成していった。その音楽はヨーロッパ中に影響を与え、ウィーンではウィンナ・オペレッタが、英国ではギルバート=サリヴァン・オペレッタが、そして米国ではミュージカルが生まれることになる。 第一次大戦後、パリではフォックス・トロットとタンゴで社会を風刺する、新しいスタイルのオペレッタが誕生する。後にパリ風ミュージカルとなったそれらの多くを手がけた巨匠が『巴里の恋愛協奏曲』のもとになった「Pas sur la bouche!」(25)の作曲家モーリス・イヴァンだった。 20年から40年にかけて全盛を誇ったパリ風ミュージカルは、中流階級の若い女性の浮気、取り違い、嘘を、たくさんの笑いにまぶして描いた軽喜劇である。それらは、日常の世界がいかにシチュエーションによって笑いへと変化するか、いかにリズムや言葉によって驚きへと変化するかを、再発見させてくれる。二年間のロングラン・ヒットを記録した「Pas sur la bouche!」はその模範的作品であった。 ![]() 誰もが誰かに恋してる 1925年、パリ。美しい女性ジルベルト(サビーヌ・アゼマ)は実業家の夫ジョルジュ(ピエール・アルディティ)と理想的な結婚生活を送っている。しかし彼女はエリック(ランベール・ウィルソン)というアメリカ人男性と離婚歴があり、それだけが夫への秘密。夫は妻の貞淑を信じて疑わず、彼女がバツイチだなんて夢にも思わない。ところがこともあろうにジョルジュは仕事の取引相手としてエリックと偶然知り合い、しかも友情を抱くまでになる…。 一方新進気鋭の芸術家シャルレ(ジャリル・レスペール)もジルベルトに想いを寄せていた。いつかジョルジュから彼女を奪ってやると、常に虎視眈々。そしてそのシャルレに密かな恋心を抱く、小悪魔ユゲット(オドレイ・トトゥ)も加わって…。
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_Movie Information | Dondetch_ |