_ 私の頭の中の消しゴム


死より切ない別れがある。恋に落ちて、結ばれて。
そんな幸せなふたりの前に、彼女の記憶が消えていくという悲劇がたちはだかる。


 愛する人は目の前にいるのに、手を伸ばせばそこにいるのに、まるで見知らぬ人のように、自分が忘れ去られていく絶望。そして、愛を忘れたくないと願いながらも、自分の中の記憶がまっ白に消されていく恐怖。別れでもなく、死でもなく、忘却によって愛が終わっていく・・・。

 この物語には、数々の記憶すべき愛の瞬間がある。最初のキスの柔らな感覚。愛する人が初めて「愛してる」と言った時の吐息。それは幻想的で、強烈にきらめく。 しかしその瞬間が大切であればあるほど、その記憶を失っていくこと、そしてまた、その記憶だけに生きていくことは、痛ましい。

 愛の面影を必死に求める女と、愛の記憶に生きる決心をする男の姿は、生きている喜びと記憶の尊さを実感させ、かつてない心からの感情を呼び覚ます。

“私の頭の中の消しゴム”、彼だけは消さないで…。

「もう優しくしなくていいよ。どうせ忘れちゃうから。」
「俺が覚えていてあげるよ。俺は君の記憶で、君の魂なんだ。」
「すべての記憶の中で最後まで残っているものが、あなたとの想い出でありますように。」

 忘れられないセリフと、どこまでも美しいシーンの数々。そして男と女のリアルな距離感を創り出すのは、圧倒的な存在感を誇り、他の追随を許さない韓国映画界のカリスマ俳優チョン・ウソンと、完璧な美貌と才能としか言いようのない演技力を持つ、新たなラブストーリーの女王ソン・イェジンである。2004年11月、韓国で3週連続NO.1という大ヒットを記録した本作は、韓国映画界のラブストーリーを新たな次元に導き、世界中の人々の心に涙の落ちる音を響かせる。

 愛することの意味、究極の愛のかたち。そして希望が、かすかに絶望に打ち勝つエンディング。今いちばん新しくて、クラシックな愛の物語がここにある。




ピュアでまっすぐなお嬢様と、ひねくれ者の大工が出会い、そして恋に落ちる。

●第一章
 工事現場で働く無愛想な大工チョルスと、おっちょこちょいだが純粋な社長令嬢スジン。住む世界の違う2人が、コンビニでの思わぬハプニングで出会い、まっすぐに恋に落ちる。2人の運命を象徴する出会い、そして屋台での幻想的なキスシーン。愛を信じず独りで生きてきたチョルスは、スジンの愛に戸惑いながらも彼女のピュアな気持ちから、人を愛すること、許すこと、そして信じることを覚えていく。建築家として活動を始める夫と、才能あるファッションデザイナーの妻。夫のお弁当にご飯だけを2つ包んでしまったり、自分の家さえ探せずに道に迷ってしまうような彼女の物忘れさえ、しっかり者の夫には愛おしい。目が眩むほど幸せな、新婚の日々。

●第二章
 私の頭の中には、消しゴムがあるんだって・・・。
 大したことではないと思っていたスジンの物忘れが深刻になっていったのは、それから間もなくのこと。不安を覚え、医者を訪れたスジンが宣告された言葉は「若年性アルツハイマー」。肉体的な死より精神的な死が先に訪れる病。

「私の頭の中には、消しゴムがあるんだって。もう優しくしないでいいよ。どうせ全部忘れちゃうから。」
「俺が全部覚えておくよ。俺が君の記憶、君の心になるから。」

 この日から、失われていく記憶をつなぎ止めるための2人の闘いが始まる。チョルスは少しでも彼女を支えるため家中に何枚ものメモを貼り巡らせるが、彼女の記憶はどんどんこぼれていく。家族が誰なのか、自分が誰なのかすら分からなくなり、遂にはチョルスの目を見つめ、昔の恋人の名で「愛してる」と微笑むスジン。なす術のない絶望に心を乱されながらも、彼女を見守っていこうというチョルスの気持ちは揺らがない。仕事と看病に追われる日々・・・。

●第三章
 彼女に言わなければならないことがある。それを伝えなかったら、俺の人生には何の意味もない。
 そしてある日、仕事から戻ったチョルスが目にしたのは、スジンのいない空っぽの家と、1通の置き手紙。

「あなたは今、泣いているでしょう? チョルス・・・愛するチョルス。記憶が残っているこの短い間に、どうしたら私の気持ちを伝えることができるでしょう。私はあなた、チェ・チョルスだけを愛しています。これだけは忘れたくない。忘れちゃいけないのに。私の記憶を奪っていくこの病気が、あなたの記憶だけは残してくれますように。それが叶わないなら、どうか、消えていく記憶の中で最後まで残っているのが、あなたと過ごした日々でありますように。」

 手紙を読んだチョルスは、ひとつの決意をする。そして、映画は忘れられない幻想的な終章へ。


キャスト_ ソン・イェジン〈スジン〉、チョン・ウソン〈チョルス〉、ペク・チョンハク〈ヨンミン〉、イ・ソンジン〈アナ・ジョン〉、パク・サンギュ〈キム氏〉、キム・ヒリョン〈母〉
監 督_ イ・ジェハン
公 開_ 10月下旬 丸の内ピカデリー1他全国松竹・東急系にてロードショー
公式サイト_ http://www.keshigomu.jp/


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