_ ディック&ジェーン 復讐は最高!


不況、倒産、リストラ、失業...長引く不況は、現実味のあるものとして、現代のサラリーマンのストレスとなってのしかかる。

 明日は我が身。そんな現代人のシリアスな胸の内を踏まえつつ、不安を吹き飛ばし、元気をあたえてくれる快作、それが「ディック&ジェーン 復讐は最高!」だ。 本作の主人公ディック&ジェーンに、それは突然やってきた。ITメディア開発企業グロボテック社で働くディックは念願のマイホームをゲットし、昇進も決定して前途洋々。固い絆で結ばれた妻ジェーンもこれを機に仕事を辞め、夫や子どもと過ごす時間を作ろうとしていた。まさに絵に描いたような幸福な一家...となるはずだった矢先の、グロボテック社の倒産。ディックがそれを知ったとき、重役はすでに株を手放してエスケイプ。天国から地獄とはまさにこのことで、ディックとジェーンは家財を手放したものの、すぐにローンや教育費を払えなくなり、ついには電気も止められる。再就職もままならず、生活に困ったあげく手を出したのが夫婦コンビでの強盗家業。初心者ながら、もともと勤勉なふたり、犯行を重ねる度に腕を上げ、ついにはそこで得た技術を活かし、復讐計画に着手する。標的は、グロボテック社を売却して私服を肥やしていた最高経営責任者マカリスター。この腹黒い男に、ディックとジェーンが仕掛けた巧妙で執拗な罠とは?

 世の中はごく少数のエリートに牛耳られ、権力を持つ強い者が勝利を収める。そんなことは百も承知だが、社会のルールに従って一生懸命働き、正直に生きてきた結果が貧乏暮らしだなんて、納得がいかない! 社会の不条理に対して誰もが抱かずにいられない、そんな怒りを、行動にぶつけるディック&ジェーン。一時は生活のために悪事に走っても、根は善良で憎めない彼らが、諸悪の根源である権力者に一泡吹かせてやろうとするのだから、痛快なドラマにならないはずかない。気づけば給料も年金ももらえず路頭に迷う社員2000人の敵討ちに発展してしまうビッグ・スケールの復讐劇は、日ごろのストレスを気持ちよく吹き飛ばしてくれる。

 ディック&ジェーンにふんするのは、「トゥルーマン・ショー」「ブルース・オールマイティ」で人間味のあるキャラクターをユーモラスに体現してきた全米屈指のドル箱スター、ジム・キャリーと、「ディープ・インパクト」「さよなら、さよならハリウッド」でのヒューマンな好演が忘れ難いティア・レオーニ。ちょっぴり見栄っ張りなのが玉にキズだが、愛と信頼で結ばれたおしどり夫婦を、好感たっぷりに演じ切り、観客の共感を引き寄せる。

「ギャラクシー・クエスト」で落ちぶれた俳優たちやオタクをヒーローに押し上げた実績のあるディーン・パリゾットが監督を務めるとなれば、社会的弱者の奮闘劇に熱気が加えられるのは必然。負け組の逆襲を描くのみならず、勝ち組・負け組の安直にわけたがる風潮さえ軽やかに笑い飛ばす、懐の深い物語に、こうご期待!




ニューヨークの街は、両手いっぱいの荷物を抱えながら、最後のプレゼントを探す人々で賑わっていた。

 ディック・ハーバーはIT開発企業グロボテック社に勤務する優秀な社員。愛する妻ジェーンとの間に息子ビルをもうけ、幸福な家庭を築いたうえにプール付きのマイホームも手に入れたうえにコミュニケーション部部長への昇進も決定。これにはジェーンも大喜び。ハーバー家は、まさにアメリカンドリームを手に入れた、理想の一家と思われた。

 昇進後のディックの最初の仕事は、CNNの経済番組に出演し、自社のPRをすること。ところが生放送中、とんでもないニュースが飛び込んできた。マクカリスターが過去2年で自社株のほとんどを売却していたというのだ。キャスターの追及をしどろもどろでかわした後、社に戻ると、社内は大混乱に陥っていた。吸収されたグロボテック社は今や存在しないも同然で、何も知らされていなかった社員たちは残務整理に大慌て。ヘリコプターで逃げるように立ち去るマカリスターを、ディックは呆然と見送る。

 帰宅したディックを待っていたのは、ジェーンが勤め先の旅行代理店を辞職したという知らせ。彼女は仕事よりも家庭を優先させることを選んだのだ。グロボテック社の倒産を知らされた彼女は復職を考えるが、ディックは"何も心配するな、再就職の当てはある"と大見得を切る。しかし、現実は甘くない。部長職の肩書きにふさわしい再就職先が見つからないまま3か月が過ぎた。

 負債だけがつのり、電気も止められた。マイホームだけが残されたものの、不動産が暴落したため、売り払っても借金は残る。背に腹は変えられず、ディックはスーパーで、ジェーンはスポーツジムで仕事を得るが、どちらも慣れない仕事にイライラし、すぐにクビになる始末。高級家具もプラズマテレビも売りに出したが、一時しのぎに過ぎない。マイホームの抵当流れ予告の通知を受け取るにいたり、ディックはコンビニ強盗を決意する。ジェーンに"バカはよして"と止められるものの、店員に銃を向けた以上、後戻りはできない。意外なほどあっさり金を強奪できた二人は、その日から強盗稼業に熱中するようになる。研究熱心なふたりは犯行に必要な情報を吸収し、その手口は回を重ねるほど洗練されてゆく。

 生活も安定してきたある日、新進企業アーステック社から、ディックに"我が社にきてほして"との連絡が。強盗稼業が板に付いたディックはあっさり断るが、ジェーンは"足を洗うチャンスをフイにした"と怒り、ビルを連れて実家に帰ってしまう。改心して面接に出かけた彼は、副社長のポストを用意しているという提示に心を動かされる。ところが、そこに現われたのはマカリスター。アーステック社は彼が起こした新会社だったのだ。


キャスト_ ジム・キャリー、ティア・レオーニ
監 督_ ディーン・パリゾット
公 開_ 2005年12月24日より渋谷東急ほか全国松竹・東急系ロードショー
公式サイト_ http://www.sonypictures.jp/movies/funwithdickandjane/


_Movie Information Dondetch_