_ マンダレイ


イントロダクション ラース・フォン・トリアーが描く 「アメリカ三部作」第2弾
ドッグヴィルを去ったグレースを待ち受ける、奴隷たちのコミュニティ
究極の美と限りなく醜いものが共存して描かれる、衝撃の寓話


 前代未聞の実験的な撮影方法と論議を呼ぶテーマで映画界を騒然とさせた『ドッグヴィル』から2年。 ラース・フォン・トリアー監督が情熱を抱く、アメリカをテーマとした三部作の第2弾『マンダレイ』が完成した。 「こんな街さえなければ、世界はもう少しましになるわ」と言い捨て、父と共にドッグヴィルを去ったグレースは、 アメリカ南部アラバマ州の南京錠に閉ざされた農園にたどり着く。

 驚くことに「マンダレイ」という名のその農園では、当然のごとく白人が黒人奴隷を支配していた。 時は1933年、奴隷制度は70年も昔に終わっているはずだ。非人道的な状況を前にして、 グレースは自らにマンダレイに自由を与える使命を見出す。ドッグヴィルで学んだ「力の行使」を利用して・・・。 世界を良く出来ると固く信じる彼女は、黒人奴隷たちに対し自分の思い描く自由の素晴らしさを教育しようとするが、 彼女の善意の全てが最悪の状況を産み出していく。そして最後に、理想主義に燃えるグレースを待ち受けていたのは、 想像をはるかに超える困難と、屈辱と、驚くべきマンダレイの秘密だった・・・。

『ドッグヴィル』のニコール・キッドマンに代わり、本作品では『ヴィレッジ』で批評家から大絶賛を浴びた 新人女優ブライス・ダラス・ハワードが、見事にグレース役を演じてみせる。 ラースがブライスをキャスティングした時点では、まだ『ヴィレッジ』は公開されておらず、 彼女はまったくの無名女優だった。にも関わらず、多くの女優が欲しがったはずのこの大役をなぜ彼女が獲得したのかは、 映画を見れば明らかだ。

「アメリカに行ったことがない」と自認するラース・フォン・トリアーは、 今回、奴隷制度という、アメリカがおそらく、出来るものなら歴史から消してしまいたいと思っている暗い過去を 大胆にも取り上げてみせる。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でカンヌ映画祭の最高賞パルムドールを受賞、 続く『ドッグヴィル』では、アメリカの小さな町の閉鎖性と人間の姿を衝撃的な様式で描き、 カンヌ映画祭無冠にして最大の話題作と言わしめたラース・フォン・トリアー。アメリカの、そして世界の、 最も古典的で最大の問題とも言える人種問題をテーマに、彼が描きたかった物語とは、いったい何なのか。 前作『ドッグヴィル』と同様の舞台形式で描かれた作品にも関わらず、本作が初めて上映された2005年のカンヌ映画祭で、 観客はその衝撃のラストに一瞬凍り付いたようになった。しかし、エンドロールが流れ始めると、 場内には一斉に大きな拍手が湧く。それは、偽善や社会の矛盾をダークでシニカルに描く、 ラースならではの手腕に対する賞賛の意の表明であり、本作が前作とは違った驚きに満ちていることの明らかな証明であろう。 鬼才ラース・フォン・トリアーの新たな寓話は、再び世界に猛烈な反論と、惜しみない賛辞の渦を巻き起こす。




これは「こんな町さえなければ、 世界はもう少しましになるわ」という言葉を残し、 ドッグヴィルの町を焼き払ったグレースの、 その後の物語。

 1933年、季節は春浅き月。
グレース(ブライス・ダラス・ハワード)と父親(ウィレム・デフォー)とギャングたちは新たな居住地を求めるうちに、 アメリカ南部の奥深く、荒野に広がる大農園へとたどり着く。厚い鎖と南京錠で閉じられた大きな鉄の門。 そしてその横には、枯れたカシの木と、「マンダレイ」と彫られた重く大きな御影石。そう、ここはマンダレイの大農園だ。

 休憩を取るために車を停めた彼らのもとに、助けを求める一人の黒人女性が走り寄る。 女性の後を追って門をくぐり抜けたグレースの目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。 70年以上も昔に廃止されたはずの奴隷制度が、依然存続していたのである。 白人が黒人奴隷を鞭で打つという非人道的な行為を見て、グレースは思わず干渉に入る。   “奴隷を作り上げたのは私たち白人。彼らへ対して責任を取らなくては” 使命感に駆り立てられたグレースは、父親の制止を振り切り、マンダレイの黒人たちを独立させ、 彼らが自らの手で収穫を果たすまで、ここに残り彼らを助けようと決意する。

 君臨していた女主人から黒人たちを解放し、人間の権利について必死で彼らを教育しようとするグレース。 だが奴隷という立場に慣れた彼らに民主主義を教えるという正しい目標は、非常に難しいものだったことを、 グレースはすぐに認識させられる。さらに追い討ちを掛けるように、悪天候による飢饉が事態を悪化させていく。 グレースは尚も辛抱強く黒人たちの生活に介入し続けるが、グレースの説いた民主主義は黒人の間のトラブルを巻き起こし、 グレースは自ら抱えた理想と現実とのギャップに飲み込まれていく。

 そして、季節は収穫の秋。
待ちに待った収穫期を迎えた時、すでに全てが手に負えなくなっていたグレースは、 躊躇しながらも、かつての「女主人」が残した差別的な「ママの法律」に助言を仰ぐ。 そしてその瞬間、グレースの理想は予想もしなかった側面を向かえ、ついにはマンダレイの秘密がグレースに牙を向ける・・・。

 グレース、お前は6歳の頃と何も変わっていない。
 お前は“カゴの鳥”が可哀想だと、忠告を無視して空に放した。
 自由は小鳥に何をもたらした?
 翌朝、窓辺で凍死していた。
 飼われていた鳥は、自由に適応できないんだよ。


キャスト_ ブライス・ダラス・ハワード、ダニー・グローヴァー、イザーク・ド・バンコレ、ウィレム・デフォー、ローレン・バコール、クロエ・セヴィニー
監 督_ ラース・フォン・トリアー『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『ドッグヴィル』
公 開_ 3月シャンテシネにてロードショー
公式サイト_ http://www.manderlay.jp/


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