『孔雀 ―我が家の風景―』オススメ最新映画情報



_ 孔雀 ―我が家の風景―


第55回ベルリン国際映画祭 審査員特別賞・銀熊賞受賞作品
別れてはまた集う、美しき家族の年代記。


 文革が終わった1977年、私たちは何一つ持っていなかった。変わらないのはただ一つ路地裏で食卓をかこむ家族の温かさだけだった。落下傘部隊の将校に恋した姉、知的障害がある気のいい兄、小さな町を飛び出した気弱な弟――。待ち望んでも開かない孔雀の羽の様に、皮肉な運命に家族は揺れ、そしてまた寄り添っていく。1977年、人々は手にした事のない自由を持て余し、迷いながら、歩きはじめた。

 1977年、12年続いた文化大革命が終わり、ケ小平(ルビ:トウショウヘイ)は中国の新しい復興への道を歩み始めた。しかし、地方の小都市で暮らす普通の庶民たちには、どんな変化があったのだろう。
『孔雀―我が家の風景』の舞台になった町は特定されていないが、一つの決まったパターンをもったどこにでもある中国の田舎街である。散歩に出ればすぐに親しい人の顔に出会うメインストリートがあり、2、3の劇場があり、二流の一座の踊りと、地元の京劇の2本立て。何件かの工場、郵便局、病院とデパートが一つずつ。そして、そこかしこに路地裏で食卓を囲む家族の風景がある。実在の都市で例を上げれば、邯鄲(かんたん)や、自貢(じこう)、蚌埠(ぼうふ)、保定(ほてい)といった街はすべて似ている。

 こうした中国の田舎町を舞台に、こわれかけ、離れてはまた寄り添いながら暮らしていくある一つの家族の愛の年代史――それが『孔雀―我が家の風景』である。
「多くの中国の人々はこういう街で成長し、やがて去っていく。そして出て行くことができないと嘆息する青春の胸のうちを描きたかった。私がそうであったように。」
 こう語る監督のチャンウェイは、本作で監督デビューするまでは世界的な撮影監督として多くのキャリアを積んできた。チャン・イーモウ、チェン・カイコー、ジャン・ウェンなど中国を代表する監督の他、ロバート・アルトマン監督の『相続人』(97)でも撮影を担当している。また、チェン・カイコー監督の『さらば、わが愛/覇王別姫』(93)ではアカデミー賞撮影賞にノミネートされている。

 12年続いた文革が終った1977年から物語を始め、解放後の時代の中の一つの家族のスケッチとして描かれるのは、頭上で変化していく大きな政治のうねりとは無関係な人々の感情の細やかさである。人々は自由をもてあまし気味に、おずおずと歩き始める。そんな時代背景の中に浮かび上がる、ある家族の肖像なのだ。

 本作は第55回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞し、世界中の賞賛を浴びた。長編処女作でこの快挙を成し遂げたチャンウェイは、今後、07年撮影開始の『赤壁之戦(原題)』(ジョン・ウー監督)に撮影監督として参加予定。本作で本格的な映画女優としてデビューしたチャン・チンチューは、自由に憧れる一家の長女役を瑞々しく演じている。彼女は中国で大ヒットしたツイ・ハーク監督『セブンソード』(05)のヒロイン役にも大抜擢され、ポスト"チャン・ツィイー"の呼び声も高い。




感受性が鋭く、自由に憧れるウェイホンは、突飛な行動が多く、家族の中で浮き上がっている。

 工場で瓶を洗う仕事が気に入らず、両親が彼女のために用意した保育所での新しい仕事にも身が入らない。仕事中に彼女は抱いていた幼児を床に落としてしまい、人々の叱責を受ける。
 ある日、ウェイホンは、空から降ってきた落下傘部隊の将校に出会い、恋心を抱く。そして部隊に志願するが、入隊は認められなかった。夢が叶わず、拒食症になるまで落ち込んだ彼女は、ある日、自前で落下傘を縫い合わせ、自転車の後部につけて町中を走り回り、人々を驚かせる。

 彼女の兄ウェイクオは、幼児の頃の脳感染が原因で精神障害を患っていた。両親は彼をかばい、家族ぐるみで体の大きな兄の面倒を見なければならなかった。兄の世話を負担に感じた姉と下の弟のウェイチャンは、ある夜、兄にネズミ駆除の毒薬を飲ませようとするが、母親に見つかってしまう。母親は何も叱らない代わりに、翌朝の食卓の席で、同じ毒をアヒルに飲ませ、もがきながら死んでいく姿を家族に見せ付ける。

 ウェイクオの人生を不憫に思う母は、ある日、足の不自由な農家の娘ジンズィに彼の嫁になってくれるよう懇願する。ウェイクオと二人で屋台を出す資金を出資することを条件に、ジンズィは彼と結婚する。
 弟のウェイチャンは、ハンディキャップのある兄を中心にした家族の鎖から逃れたいと思い、故郷の町を飛び出してしまう。やがて彼は、前夫との子を持つ年上の妻を連れて帰ってきた。やくざな生活の始末の為か、彼は右手の指を失っていた。彼は自分が将棋に興じる間、妻を場末の遊興場で歌わせ、金を稼がせる自堕落な生活を始める。

 そして1984年の冬がやってきた。動物園に集まった家族は、檻の前で孔雀が羽を広げるのを待っていた。姉は運転手の夫と離婚し、故郷に戻っていた。兄とジンズィの屋台は繁盛し、家族の中でもっとも裕福になっていた。しばらく待っても一向に羽根を開かない孔雀をあきらめ、彼らは動物園を去っていく。すると一匹の孔雀が、その優雅な尾羽をいっぱいに広げてみせるのだった。

(C)ASIAN UNION FILM&MEDIA

キャスト_ チャン・チンチュー(Zhang Jingchu)カオ・ウェイホン役、フェン・リー(Feng Li) カオ・ウェイクオ役、ルゥ・ユウライ(Lu Yulai)カオ・ウェイチャン役
監 督_ クー・チャンウェイ(Gu Changwei)
公 開_ 2007年早春、渋谷Q-AX他全国順次ロードショー
公式サイト_ http://www.kujaku-movie.com


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